・専門家では無く、経営者になることが重要
・自分がいなくても回る「仕組み作り」こそが大切
・組織づくりについて、学ばなければ勝てない時代になっている
専門家では無く、経営者になることが重要
2017年箱根駅伝、青山学院大学3連覇
2017年、1月2日・3日に行われた「東京箱根間大学駅伝競争」(=箱根駅伝)は、戦前の予想通り、青山学院大学の3連覇で幕を閉じました。
1区の梶谷選手がしっかりと先頭との差を拡げられず、スターターとしての役割を果たすと、2区の一色選手で2位へ浮上、そして3区の秋山選手でトップに立ち、往路優勝。
復路は、7区の田村選手にアクシデントがありましたが、8区の下田選手が見事な快走で突き放し、2位に約7分の差をつける圧勝劇。
下級生も育っており、まだまだ“青山学院時代”は続きそうな勢いです。
なぜ、青山学院大学は勝ち続けられるのか
現在の監督である原晋監督が就任したのが13年前。
その頃は予選会も突破できず、非常に苦労されたことは想像に難くないところです。
監督就任、11年目にして箱根駅伝初優勝。
そこからの3連覇は、指導者として、非常に見事な手腕だと言わざるを得ません。
では、なぜ、原監督の青山学院大学は勝ち続けらるのか。
実は、「仕組み作り」こそが、青山学院大学の一番のポイントなのです。
育成の「仕組み作り」こそが、青山学院大学の強さの秘訣
青学陸上競技部の練習を見に来た人が私の姿を見て、「怠けているなあ」と言ったこともありました。
でも、私の考えではチームから離れて見ていないと監督の仕事はできません。
エンジン全開でこちらの部員、あちらの部員と精力的に指示を出している監督もいますが、
それはチームがまだ成熟していない証拠です。
あるいは、こと細かに指示を出さないと気が済まない監督だと思います。
「教えることに酔っている」
日本の指導者には、このようなタイプの人が非常に多く見られます。
“自主的に行動してほしい”“自主性を持って考えてほしい”
と多くの指導者は口にしますが、自主性を奪っているのは、誰でもない「指導者自身」なのです。
これはスポーツだけでなく、ビジネスでも教育現場でも、家庭でもどこでも同じです。
チームが強くなるほど、監督の「見る」仕事は増える。
それが成長したチームの理想形です。
その状態を維持できるチームこそが常勝軍団だと私は考えています。
私も教師時代に、若いころは“熱血指導”で有名でした。
毎日、最初から最後までグラウンドに立ち、一から百まで指示を出す。
そんな状況が続くと、私がいないと選手は練習を始めることさえできないのです。
「先生、今日は何をしたらいいでしょうか」
と、練習の前に私に聞きに来ることから始まるのです。
“信頼されているな”とその頃は思っていましたが、そんな私の姿勢が選手たちの「自主性」を奪っていたのです。
自分がいなくても回る「仕組み作り」こそが大切
なぜ、指示を出さなくても、青山学院大学の選手たちは考えて行動できるのか。
とは言え、選手たちが自分たちで考え、行動できるようなチームにすることは並大抵のことではありません。
大人の組織である「職場」でも、できている組織はどれだけあるのでしょうか。
私も多くの職場にお伺いする機会が多いですが、経営者の悩みで一番多いのが「自分たちで考えて行動できない」という“自主性”のことについてなのです。
では、原監督はどうやって、青山学院大学を自分たちで考え、戦える集団にしたのか。
私の理想は、監督が指示を出さなくても部員それぞれがやるべきことを考えて、実行できるチームです。
つまり、指示待ち集団ではなく、考える集団。
言葉にするのは簡単ですが、考える集団をつくるには、土壌づくりと同様に時間が必要です。(中略)
自分の考えが反映されたとなれば、次はさらに詳しく状況を調べて、よりよい練習環境を整えようとします。
このレベルに部員が育つまでには、やはり時間が必要です。
初期の段階は教えることがたくさんありました。
考える習慣がない部員に「さあ、考えなさい」と言っても無理。
だから、監督に就任した頃は、私が話すことが多かったと思います。
ただ、考えるための材料は与えても、できるだけ答えは出しませんでした。
そうすると、なんとか自分で答えを導き出すしかありませんから。
大事なことは「時間がかかる」ということを知っていること。
私が見て、多くの指導者は焦って成果を出そうとしてしまいます。
それは、狩猟のように、あるものを狩ってしまうような指導であり、一度狩ってしまえば、他の所へ移動して、また狩ってこなくてはいけません。
そうでは無く、作物を育てるように、雨の日も風の日も、手塩にかけて育てに育てることが重要なのです。
育成できる「仕組み」を構築してきたから強い
最初は徹底して教えることからはじめ、少しずつ考える場面を増やし、成功体験を積ませていく。
何となく指導するのではなく、未来を見据え、どうやって仕組みにしていくかを考えて作り上げていく。
その「仕組み化」こそが、青山学院大学、原監督のすごさなのです。
チームをどうしようかという“イメージ”を作り、そこから一歩一歩着実に取り組んで積み上げていく。
その結果、自分たちで考え、成果を出せる“常勝軍団”が出来上がっていくのです。
走力に繋がる「トレーニング」はもちろん、モチベーション向上などに関する「心(メンタル)」についても、仕組みとして落とし込まれている。
さらに原監督の凄さは、走ることに留まらず、心の面(メンタル)についても、しっかりとマネージメントできていることです。
青山学院大学の選手たちが、目標を自分で考え、逆算して何をすべきかを計算し、壁などに貼っていることは有名な取り組みです。
その目標に対して、しっかりとミーティングを行い、何ができていて、何を改善すれば良いのか。
自分たちで考えて行動する仕組みが作られているのです。
人に言われて行動するのと、自分たちで考えて行動するのでは、同じ練習でも成果が違って来るのです。
「組織づくり」について、学ばなければついていけない時代になっている
ただ、“早く走る方法”や“トレーニングの手法”だけを学んでいては、勝てない時代になりました。
他の大学の監督たちが軒並み口を揃える言葉が、「何かを変えなければ、青山学院大学に勝てない」という言葉。
しかし、多くの指導者は“ランニングのスキル”や“体幹トレーニングの方法”、“栄養学”など、局面のスキルやノウハウばかりを学ぼうとします。
それでは、いつまで経ってもこちらが教え続けなくてはならず、自立した勝てるチームにはならないのです。
大事なことは、“自分で考え、行動できる”かということ。
原監督は、
管理職の仕事は、管理することではない。感じること。
と言われていますが、いかに自分の仕事を減らし、全体を見て、感じることのできる立場になれるか。
“チームをマネージメントする”という姿勢が、これからの指導者には求められているのです。
そのためには「組織作り」(チームマネジメント)について、しっかりと学ぶ必要があります。
「専門家」ではなく「経営者」になることこそが、これからの指導者に一番求められる能力なのです。
箱根駅伝、青山学院大学の3連覇から、チームの“マネージメント”について考えてみました。
ぜひ、皆さんならどうするか。
現状はどうなっているのかを考えて、行動してみてくださいね。